11月23日 門司港の昭和レトロ館で関谷ひさし展開催
門司港の栄町銀店街にある昭和レトロ館で開かれている関谷ひさし展に出かけた。「ストップ!にいちゃん」や「少年№!」など健全で明るい少年マンガの第一人者である関谷さんだが、週刊誌化の時代変化に乗り遅れてしまった結果、今では知る人はあまり多くない。
関谷さんは門司港の出身で、今回のイベントは去年亡くなった関谷さんの功績を称えて開かれたものだ。さらに今回は特別講演としてまんだら屋の作家の畑中純さんのお話を聞くことができた。
昭和30年代、その頃最も時代に愛された少年漫画雑誌はおそらく光文社の「少年」だろう。横山光輝の「鉄人28号」、手塚治虫の「鉄腕アトム」と並んで連載陣の3本柱といわれたのが関谷ひさしの「ストップ!にいちゃん」、この3本で巻頭カラーや付録を持ち回りしていたことからも、当時の関谷がいかに人気が高かったがわかるだろう。
主人公の南郷勇一はスポーツ万能、頭もよく、リーダーシップがあり、皆から愛されているスーパーマン。子どもの頃スポーツが苦手、勉強もパッとせず、友達はおらずいつもいじめにあっていた自分としては彼が本当に憎らしいほど羨ましかった、でも本当に好きだった。
鼻がツンととんがっていて、りりしい感じのする主人公の顔の系譜は、その後吉田竜夫、永井豪、ちばてつやらに受け継がれていき、関谷の絵は少年漫画の大きな源流のひとつになっているといってもいいだろう。
しかし週刊誌化の波に乗り切れず次第に作品をみなくなる。学年誌にちょこちょこと作品を描き続けるが、最近はすっかり忘れられた漫画家になってしまった。誰にも看取られずひっそりと息をひきとったのが去年。その頃、関谷の自宅に通い詰めていたのが畑中純氏だった。
晩年の関谷氏がどこからも依頼を受けたわけでもないのにコツコツと書き溜めていた原稿を見せられて畑中氏は息を飲む。手塚治虫と同じ年齢なのでもう80歳近くになっている関谷の原稿は、年齢の衰えを全く感じさせないほどの最高の出来栄えだった。
とにかく線がきれいで昔よりも一層シャープさが増しているではないか。しかもキャラクターが立っており、敵討ちモノなのに暗さは全くなく、むしろ妙に話が軽いのだ。これぞ関谷流の「軽み」のココロ!
原稿を見た畑中はどうしてもこの作品を本にしたいと奔走するが、関谷を当時最も重用していた光文社には最早その力はなく、色々あって双葉社が引き受けることになった。しかしようやく本が出来たときには関谷はもうこの世を去っていた。彼を悼んでいしかわじゅん、夢枕獏、畑中純らがこの本の巻末にコメントを寄せている。それが「侍っ子」という関谷ひさしの最後の作品だ。
今の話は門司港の昭和レトロ館で11月15日に行われた畑中氏の講演会で聞いてきたエピソードだ。そんないきさつを聞いた後に「侍っ子」をじっくり読んでみた。久しぶりにあの頃のワクワクするような感覚にとらわれた。悪人が全く登場せず、1人も死なない時代劇、今のような殺伐とした時代だからこそ、この作品は輝きを増すのかも知れない。
「関谷さん、あなたの漫画本当に大好きでした。そしてありがとう」
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